サイクリングファッション

自転車乗りに適する服装

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先日、ぼくはリカンベントというタイプの自転車を買った。リカンベントというのは、はっきり言って変な自転車だ。変な自転車が欲しいわけではないが、やはり人と違うもの、個性のあるものが欲しいだ。自転車もファッションも同じだと思う。

個性のある自転車

自転車は乗り物でもあり、人の個性を表す物でもある。普段電動アシスト自転車からロードバイクまでたくさん乗っているが、色とスペックにこだわったロードバイクとデザインにこだわった電動アシスト自転車以外に、もっと変わったものを探し始めた。

そこで見つかったのが、リカンベントだ。

変な自転車

まず、リカンベントにはサドルが無い。じゃあどこに跨るのか、というと、これはどこにも跨がらないんだ。サドルの代わりに車のバケットシートみたいなものが付いていて、ソファや座椅子に深く腰掛けるような姿勢で乗る。クランクやペダルは自転車の1番前に配置されていて、腰掛けた状態から足を前に伸ばすようにして漕ぐ。トレーニングマシンの、レッグプレスの要領で踏み込むといえばわかりやすいと思う。ここまで言えばもう、どれだけ変なのかわかるよね。

これに乗っていると、すれ違った人のほぼ全てが振り向く。それも奇怪なものを見る顔で。検索して適当な画像を見てもらうのが手っ取り早いけど、本当に「これって自転車なの?」と思ってしまうような、世間一般の自転車から遥かに乖離したカタチをしている。恥ずかしいから今はまだ夜中にこっそりと乗る程度だ。

見たくなる 自転車

でも、そんな変な自転車だからこそ、ぼくはとても惹かれて買ってしまったんだ。自転車の常識を破壊するような自転車。趣味でも仕事でも自転車をいじってるぼくだからこそ、これは乗るべくして乗るものだと直感した。どんなことだってそうだ。常識や心の検閲に縛られていたら、それに対する面白いアイデアなんて浮かびっこないからね。

自転車乗るときの課題ーあつさ?

さて、そんなリカンベントだけど、乗っていて早速問題点が浮上してきた。それも、普通の自転車でも起こりうる問題点が。……と言うのも、「めちゃくちゃ背中が蒸れる」! シートが背中に密着するから、熱がこもって汗をかいてしまう。風が通ればいいけど、シートは合皮張りで通る隙間も無い。ぼくみたいな汗っかきにとっては、なかなかヘヴィーな問題なのだ。

これは普通の、サドルに跨って乗る自転車でも起こりうる。みんなも大きなリュックを担いだとき、背中が汗だくになってしまうことがあるだろう。汗っかきのぼくはそれが嫌で仕方がなくて、自転車に乗るときはリュック等カバンの類を一切持たないで乗っていた。しかし、新しい自転車に乗り始めたことで、全く違う方向からこの問題がやってきたのだった。

さて、どうやってこれを解決しようか。もうそろそろ冬も終わって、春と夏が来る。背中ムレムレ問題が猛威を振るう季節だ。シートを合皮のものからメッシュ素材のものに変えたいけど、ただでさえ珍しいリカンベントだから、そう簡単に替えのパーツは手に入らない。

暑さ解消のため

そこでぼくは気付いた。大袈裟に気がついた。蒸れる背中は、素肌から始まってインナー、シャツ、ジャケット、そしてシートと、複数のレイヤーで構成されている。レイヤーが重なりすぎているから当然、熱や湿気がこもる。要は、これらをひとつふたつ消せばいいのだ。1番外側のシートは変えられないし、取ってしまったら乗れなくなるから、それ以外を全部無くせばいい。

寒い時に自転車を乗る 服装

こうしてぼくはリカンベントに乗るときは常にインナー一枚で乗ることを決意したのだったが、常識的に、そして季節的に考えたら更に変なヤバい格好になるため、しぶしぶ断念せざるを得なかった。常識を打ち破るはずのリカンベントとそのライダーが常識の壁に阻まれるとは、何とも悔しい。

インナー作戦は人気(ひとけ)の無い真夏の深夜までとっておくとして、じゃあ今の時期はどうするか。熱に浮かされた頭で必死に考えたのが、中間のレイヤーである「服」を工夫する、ということだった。

今回は、その「服」についての話をしよう。

自転車乗りに適する服装

1、2年くらい前。欧州のサイクリストたちの間で、ヘルメットとシューズだけのほぼ全裸状態でロードバイクを駆る「全裸チャレンジ」なるものが流行ったが、流石に日本で同じことをする人たちはいなかったし、これを読んでるみんなの中にも全裸でサイクリングする人はいないと思う。そう思いたいし、そう願いたい。全裸以前に、みんなはおしゃれが好きだろうから、自転車に乗るときも割りかしカジュアルな服装じゃないだろうか。

カジュアルな服装で電動アシスト自転車COOZYを乗る

ぼくは、みんなそれぞれ好きな格好で乗ればいいと思っているけど、それでも汗で蒸れちゃったり、動きにくかったりすることもあるだろう。自転車に乗るのに向かない服も当然ある。みんなの中に1人でも、今の服装だと自転車に乗りにくいと思っている人がいるならこの記事は存在意義を得ることになる。じゃあ、自転車に乗りやすい服装とは具体的に何だろうか?

人が自転車に乗るとき、自転車と直に接するのは手のひら、股、そして足の3箇所しか無い。手については省くとして、残りの二箇所を見直してみよう。

靴とトゥークリップ

下から順に攻めていこう。まずは足、つまり靴だ。

自転車に乗りにくいのは、ヒールとか革靴とかの、踵が浮いていたりして底が平らじゃない靴だったり、ブーツみたいに重くてゴツい靴だ。自転車に乗るときにヒールを履く人はいないと思うけど、スーツ姿で通勤する人たちは革靴のまま自転車に乗るんじゃないだろうか。

革靴っていうのは、はっきり言って自転車に向かない。底が滑りやすいし平らじゃないから、しっかりと踏み込めない。ぼくは通勤用にスニーカーを用意するのをお勧めしたい。自転車用に改良されたラバーソールの革靴もあるから、そういうのを買ってもいい。どうしても普段の革靴で乗らなきゃいけないなら、トゥークリップ をつけよう。

自転車通勤用ラバーソールの革靴

トゥークリップというのが、つま先を挟んで、シューズとペダルを固定するためのアイテム。どんな靴でも乗れるのがトゥークリップの一番の特徴だ。出勤する際はもちろん、普段用、アウトドアや観光時でも大活躍するもの。

ペダルにボルトで取付るトゥークリップは、対応ペダルであれば付けれる。取付けボルト用の穴とストラップを通す穴があれば、ほとんどの自転車がペダルが付けれるので、大変便利でおすすめ。

ズボン

次は股。ズボン、パンツ、下着を見直そう。

股は自転車に乗るとき、1番よく動く箇所だ。ピチピチしたスキニーなんかよりも、少しゆったりしたものを選ぼう。ゆったりしたシルエットのパンツが好きじゃないなら、ストレッチ素材のものがお勧めだ。夏場はすぐビショビショになってしまうから、下着も、速乾性のもの、通気性がいいものにしよう。

自転車の「汗対策」にインナーウェアを使用するのもあるが、「吸汗速乾性」が最重要だ。電動アシスト自転車を乗れば、すこし楽ではあるが、普通の自転車に乗れば、冬でも汗をかくので、吸汗速乾性を重視して服装を選ぼう。

カバン

自転車と直に接する部分以外も、割と重要になってくる。先程言ったように、バッグなんかを担ぐと背中が蒸れてしまうから、上半身も見直したい。

今の季節だと、乗る前は寒いけど乗った後は暑くて仕方がないってことがよくある。解決策としては、速乾性で薄手の肌着にする、肩幅がゆったりしていて、首元や袖をベルクロなんかで調整できる上着にすることだ。上着はマウンテンパーカーとかが適している。アウトドア系のブランドはちゃんと「運動」することを考えて作っているから、自転車にも向いているんだ。

自転車ウェア バックパック

バックパックも、背中にメッシュが付いたものや、バッグ自体が背中と直接接しないものがお勧め。ぼくは登山用や自転車用のバッグメーカーのものを高校生の時から使っている。たまにしか担がないのもあるけど、とても長持ちする良いバッグだ。

自転車に乗る時の安定感は抜群で、夏など暑い時期も、ストラップや背中部分が蒸れるので、服装と同様に通気性が良いものであれば使いやすいだろう。

こんな感じで、自転車に合わせて服装を考えてみるのも割と面白い。服選びに何かひとつでも理由があるなら、それは無駄がなく、洗練されたファッションになるとぼくは考えている。

自転車はただの乗りものにせず、ファッションの一部に融合し、自分の個性を表すものにしたい。自転車と言いた時にファッション、個性、自分のスタイルなどにつながるイメージがぼくが信じている。

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